アランセーターと母性
ナンパ
20代前半、2人旅。夏から秋にかけての2ヶ月弱、ヨーロッパをバックパッカーで周っていました。
「ついに、着いたね~♪」と感激しながら、ダブリン駅のホームを歩いていると、アイルランド人のお兄さんに声をかけられました。
「うちに泊まりませんか?」
え、え~っ? 何? はて? どゆこと?
と、この後の展開が気になるあやしいやりとりなのですが、あっさりと結論を書いちゃいますと(書いちゃうのか笑)、そのご家族のご自宅を、今でいう民泊のように開放されていたのです。
水平線
フランス・シェルブールからフェリーで、アイルランド・ロスレアへ。18時間の船旅のため、船中で一泊。船酔いしてもどしながらも、陽が沈んでいく丸い水平線を眺めては、地球は丸いんだなあ...と感激していました。
港に着いたら、列車でアイルランドの首都ダブリンへと揺られます。列車の窓越しに眺める緑の森は、まさしくケルトの妖精たちが住んでいるようでした。
数時間後、無事にダブリンの駅に感激の到着。夢心地での到着間もなくのナンパ!(あ、違った)
ドッキリな言葉とは裏腹に、素朴な感じの大学生くらいのお兄さんです。他にもすでに誘われている旅人さん達がいます。
ではでは、「熟慮の直感のOK」を信じ、私たちも気ままな旅なので、お誘いにのっかることにします♪♪
マダム
宿泊先のマダム(最初に登場したお兄さんの母親)は気さくで優しくて、部屋に遊びに来ては、聞き取れないアイルランド訛りの英語で、たくさん話してくださいました。
他に、アメリカ人の女のコや、イギリス人のご夫妻、フランス人の男性が、同じ時に泊まっていました。
お風呂は共同で順番なので、異国の体臭のことや、誰か間違えて途中で入って来ないかしら?とか、20代女子ならではの心配をした記憶があります。
毎朝の朝食は、かちかちに焼かれた固~いベーコンと目玉焼きだったことも懐かしいです。
数泊させてもらって、私たちは北アイルランド・ベルファストへの旅に向かうために、さよならを告げました。
日本からの小さなプレゼントを、おばさん(マダム)は、愛情いっぱいの大きな喜びのリアクションと共に、ガラスケースに飾ってくれました。
※アイルランド・ダブリン[DUBLIN
ROAD]での1枚。閑散としていて、いつも風が舞っていた風景を思い出します。1枚だけ写真が見つかったのだけど、なんてことのない構図すぎ...。写真は、真面目に探せばどこかに束で入り込んでるはずなんだけど。はず...笑
無計画
かくかくしかじか、北のベルファストに滞在して数日後。すでに勝手にマイホーム感を抱いているダブリンの街へと、再び南下して来ました。
「今度はB&B(ベッド&ブレックファースト)にも泊まってみようね~」って、慣れた感じで軽~く話していました。
んが、もちろん無計画。まさか、戻ってきた日のダブリンが、ラグビーかの何かの大会開催日なんて知る由もありません。
街は、昼間っからギネスの黒ビールとともに盛り上がっていて、いや、出来上がっていて、どのB&Bを訪ねても訪ねても訪ねても、空いている部屋はありません。
ノック
途方に暮れた私たちは、意を決して歩きます。泊まれる可能性があるのは1か所だけ。そこにかけるしかない。
住所を教えてもらっていたので、地図を頼りに、「初めてのおつかい」のような勇気と涙がブレンドされたような気持ちで、街外れの民泊おばさん(マダム)の家へ向かいます。
はあぁああ~、帰りついたぁ~~~;;;泣きたい。脱力感。でも、まだ本当の到着ではありません。
イギリスと似た雰囲気が香るブルーの木製のドアを、コツン、コツン、と叩いてみます...。
「どうか、部屋が空いていますように!!!!!」
夕暮れ
”あらあら、お帰り。どうしたの?”
......
最後の望みはむなしく、沈没~。部屋は満室~。
”泊めてあげられないけど。でも、ちょっと座って待ってなさい。妹の家にたずねてみるわね。
...ごめんなさい。無理だって。あ、ちょっと待ってて。他にも...。”
夕暮れの時間帯、そう言いながら、身勝手な旅人をなんとかして助けてあげようと、何十分も何軒も、知り合いの方に電話をしてくれました。
結果、全滅-----っ。
ベッド
その時、「よしわかった!OK!OK!」という感じで、「今夜は私のベッドで寝なさい」と、おばさん自身の部屋を開放してくださったのです。
スプリングがギシギシと鳴る広いベッドでした。半泣きで寝ました。
翌朝、おばさんはいつも通りの涼しく優しい顔で、私たちのかちかちベーコンと目玉焼きを用意してくれていました。それは、まさに母親から感じるものでした。
あぁ、もっと語学力があれば、どんなに感謝しているかを伝えられるのに...。
アラン
ただの若い無鉄砲な旅人は、遠い遠いアイルランドで、こんなにも親切にしていただいたのでした。芯から純朴で道徳的な国民性でいらっしゃるのだろうと思います。日本人と似ているのじゃないかと思う。
アイルランドの女性。アランセーターを真面目にこつこつと、きれいなレリーフになるように編みあげるニッター気質。みなさん、母性のかたまりなのだろうと思います。
※引用:「海の男たちのセーター」ダブリンのミュージアムに所蔵のアランセーター
もう会えることはないかも知れないけれど、朝食のベーコン、深夜のベッド、おばさんがアルバムと一緒に話してくれた家族のこと...。すぐそこにあるような、今も生きている宝物の旅の記憶。
あの時のすべてに感謝を込めて♥
(追記)素朴な国で、風がカサカサ吹いていて、街中の舗道ではマッチ売りの少女(お姉さん)が歌を歌っていました。ギリギリ旅だったけど、アイルランドセーターと緑のクマさんぬいぐるみを買って旅のお供にしました。また行けたらいいなぁ。そしたら、おばさんちまでまた歩いてみる。
☆雨のち晴れ. どうぞ大切な一日をお過ごしください.ご訪問ありがとうございます~♡
たりるんでした٩( ''ω'' )و ダイスキ!
♪雨の匂いも風の匂いもあの頃とは違ってるから. 4年目から書き連ねるすっぴんたりるんのつれづれ日記です.こちらも可愛がっていただけたら嬉しいです.みんなでまぁるい世界へ進めますように☆彡